企業訪問記 VOL.1 ジンギスカンのたれでおなじみ ベル食品株式会社

■北海道の食文化を作ってきた
本田 ベル食品といえば「成吉思汗のたれ」のイメージですが、幅広いアイテムがあるんですね。
福山 ええ、当社の創業は戦後まもない1947年です。北大農学部出身の7名の若者が起業して、最初に出した商品は水で割ってジュースにするぶどう味のシロップでした。その後1954年に大ヒットしたのが、日本初の家庭用ラーメンスープ「華味」。まだチキンラーメンもない時代、このスープの登場で、家庭で手軽にラーメンを作れるようになりました。その2年後に発売されたのが「成吉思汗のたれ」です。焼肉のたれとしては日本初でした。
本田 焼肉のたれより先に、「成吉思汗のたれ」が市販されたんですね。私も子どもの頃から食べています。
福山 といっても当時はなかなか売れなかったようです。そこでジンギスカン鍋を作り、精肉店を通じて家庭に貸し出すようにしたところ、1960年代から日常的にジンギスカンが食べられるようになりました。
本田 ラーメンとジンギスカンは北海道遺産に選ばれているソウルフードですが、どちらにもベル食品が大きく貢献していたんですね。
福山 鶏肉を揚げる前に下味をつける調味料「ザンギ名人」や、「チゲ鍋つゆ」も当社がいち早く開発したもの。2000年代に札幌を中心に流行したスープカレーに着目し、レトルトにしただけではなく「スープカレーの作り方」で家庭の食卓に広めたのも当社です。
▲道内のごく一部の地域で食べられていた羊肉を、家庭でもっと食べてもらおうと、独自のジンギスカン鍋を製造。精肉店を通して鍋を貸し出し、ジンギスカンを北海道のソウルフードとして定着させました。
 
▲好きな具と合わせ、スープカレーを家庭で手軽に作れるようにした「スープカレーの作り方」。2005年に発売して大ヒット。ラーメンスープで培った濃縮技術がいきています。

■要望に応え、進化し続ける美味しさへのこだわり
本田 ベル食品は食育にも熱心に取り組まれていますよね。
福山 北海道の素晴らしい食文化を次の世代へつないでいきたいと思っています。ジンギスカン応援隊の事務局を担っているエミナと組んで、子どもたちに羊肉のおいしさを伝え、未来のファンを増やしていきたいな、と思っています。
本田 幼稚園や保育園での出張講座は大人気です。子どもたちにはジンギスカンにまつわる紙芝居やクイズ、保護者向けには栄養の知識やレシピをお伝えして、最後にみんなで試食するのですが、野菜嫌いの子がなぜか野菜をいっぱい食べたりするんですよね。
福山 ジンギスカンで食べる野菜はおいしいですもんね。
本田 それとは別に、社長が直接お話ししてくださるジンギスカンセミナーも毎年、大好評です。
福山 転勤で道外からいらした方も多いですし、道民の方にもあらためて北海道の食の魅力を知っていただく機会になれば、と考えています。
本田 たれのプレゼントがあるので、きっと家でもつくってみようと思うはず。今年はオンラインでの開催ですが、たくさんの方に参加いただきたいですね。
福山 北海道のおいしさを全国はもちろん海外へも広げていきたいと、近年は日本と食文化の近いベトナムにも焼肉のたれを中心に輸出しています。たれメーカーはたくさんありますが、北海道に根ざして商品づくりを続けるベル食品を皆さんに応援していただけたら、うれしいですね。
▲社長自らはもとより、営業、開発など多くのスタッフにより新しい商品が開発されています。
 
▲ベル食品の商品は、スーパーなどで市販される家庭用のものと業務用に大別されます。家庭用アイテムもラーメンスープ、ジンギスカンのたれ、だし、鍋つゆ、スープカレー、丼のたれなど多彩。大手製麺メーカーのチルド商品の中に入っている小袋タイプのスープやたれも受託生産しています。

 ベル食品株式会社 代表取締役社長
 福山浩司
 創業70周年の2018年に社長に就任。
 小5の女の子のパパでもあります。